2010年12月5日日曜日

会社の利益か、社会の利益か~エージェンシー理論とスチュワードシップ理論~(2)


前回の投稿の続きです。

4年前の文章ですが、自分の軸となる想いが変わっていない事が分かりました。ビジネスというフィールドからアプローチする上で、僕が大事だと思う事のほとんどが、この文章に盛り込まれています。



(参考図書)
    

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スチュワードシップ理論では、企業の達成こそが焦点であり、企業と株主の理念の一致が前提なので、非倫理的な行動が発生することはエージェンシー理論よりは少ないと思われます。ここでのポイントは投資家へしっかりと企業の存在目的を伝えると共に、両者の利害を常に一致させるのがポイントとなります。その一方で、資産を拡大させようとすることに焦点を当てた大資産家からの投資はエージェンシー理論よりは望めず、企業を拡大化し、収益を増やしていく勢いは弱いと思われます。また、収益以外の何をもって、企業の達成を図るのかは非常に大きな問題です。

スチュワードシップ理論がより優れた理論に見えるかもしれませんが、お金を儲けようとする動機は社会を突き動かす大きな要因として存在することを忘れてはいけません。理念はものすごく素晴らしく、やっていることは誰から見ても善良な事業、しかしながら、いつまでも月20万円くらいの給料。理念も悪くないし、やっていることも別に倫理に反しているわけではないくらいの企業だが、月収100万円。どちらを取るかは人それぞれですが、少なくともどちらを取るか心の中で揺れるのが人間で、これが現実です。また企業は社会の一部であるために、生み出した利益を社会に還元すべきだ、また存在そのものが社会に貢献するものであるべきだ、という考えもあるかと思います。しかしながら、どうやって社会に貢献していることを図るのかが問題になります。何が人を幸福にして、何が人を不幸にするのか、それは非常にあいまいな問題です。依然として収益の大きさが企業を評価する上での一番の尺度とされているのは、一番数字に表しやすく手っ取り早い方法であると共に、社会に貢献しているかどうかを測る尺度がいまいち発展していないことに起因しています。

要は両方の理論とも一長一短であるということです。両方の理論に共通して言えるのは、経営者が両理論の長所、短所を踏まえながら、正しい理念を持って経営をすることが重要だということです。本当に優秀な経営者は、社会に貢献しなければ、そのうち顧客に見放され、いつかは企業として成立しなくなること、またどんなに社会貢献してもお金がなければやっていけないことを心得ています。また社会に対して貢献している企業が、もっともお金を稼げるような制度、社会的プレッシャーを作ることも重要です。そのためには社会に貢献している度合いを測るような有効なツールを発明すること、社会貢献活動の報告に関する制度の整備などがあげられます。また私たち自身が非倫理的な方法でお金を稼いでいる企業の商品を買うのを辞めて、少し高値でも素晴らしいことをしている企業の商品を買うといったような姿勢、またそういったことを教育として後世に伝えていくことが重要になると思います。

なぜこのような説明を長々としたかというと、このビジネスの視点から、スポーツの分野に焦点を絞っているだけでは見えてこないことがあるということ、さらに日本のスポーツは社会的な重要性を保ちつつも、お金をしっかりと稼いでいくことが必要なのだということを強調したかったからです。スポーツビジネスという分野が注目され始め、ビジネスの観点がどんどんと日本スポーツ界に流入してくる中、ビジネス化が加速するとどのような状況が起こりうるのか、それを前もって学び、同じ過ちを繰り返さないようにするのは非常に重要です。スポーツの公共性は非常に高いがために、スポーツが一部の利益に利用されるような間違った方向に行かないよう、幅広い視野を持ち続けるのは将来のスポーツ界のリーダーにとっては非常に重要な視点であると思っています。