2010年12月3日金曜日

会社の利益か、社会の利益か~エージェンシー理論とスチュワードシップ理論~(1)


昔、HOOPHYSTERIAに載せて頂いていた記事を載せます。大学3年生の終わりに休学して1年間留学していた時に書いたので、普通であれば大学4年生の時期。自分はビジネスの専門ではありませんでしたが、当時は当時で一生懸命勉強していたんだなぁ、と我ながら関心(笑)今よりも全然知識量が無い中書いていますが、それほどロジックがおかしな点は無いと思います。2回にわけてお届けします。少し訂正が必要な部分は赤字で補足してあります。
(参考図書)
    
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インターンシップも始まってから1ヶ月がたとうとしています。インターンということもあり、アシスタント的な仕事、悪く言えば雑用的な仕事が多いのも確かですが、全部英語なので、雑用とはいえ、かなり英語の勉強にもなっています。さらには現場を直接この目で見られることはかなり大きく、毎日が勉強の日々です。3月の初旬にインターンが終わるのですが、あっという間に時間が過ぎてしまう気がします。

連載の最初のほうで、お金を生み出すことについての姿勢の違いについて日米比較をしました。(順序が前後しますが、先にこれを読んでも特に問題は無いので、後でこれについてはアップします)今回はややスポーツという話から離れますが、もっと踏み込んでビジネスの始点からその理念の根本は何なのかについてを説明したいと思います。ビジネスという概念が注目されスポーツに取り入れられる中、経営の根本的な考え方を知るのはスポーツの将来を考える上で非常に重要だと考えるからです。

アメリカと日本では経営に関し、コンセプトに大きな違いがあります。分かりやすくするためにここで株式会社の仕組みを簡単におさらいした後、エージェンシー理論、スチュワードシップ理論を紹介したいと思います。

まずは株式会社について説明します。世界史で習ったかもしれませんが、世界最初の株式会社は東インド会社だといわれています。17世紀始め香辛料が破格の値段であった時代、貿易で香辛料を輸入すればものすごい儲けが得られたものの、そのために大きな費用が必要でした。大きな船、大量の乗務員、長旅に耐えうる食料、などなどです。しかし船が海賊に合って破壊される、天災にあって沈没するなど、航海には大きなリスクを伴いました。成功したら大儲け、しかし失敗したら大損。当時貿易はギャンブルのようなものでした。そこで発明されたのが、株式です。東インド会社がお金持ちからお金を集めて回ります。「航海にはお金がかかるんです。もし貿易に成功したら、何倍にしてでもお金を返します。だからうちの会社を投資してください。失敗したら痛みわけになりますが、うちの会社は成功率のほうが高いんですよ、信じてください!」というような原理です。逆に伝統的な会社形態の有限会社(20065月の会社法の適用で、有限会社は株式会社の一部となることなりました)は、基本的に自分の手元の資金で経営をやりくりする企業のことを表していました。そのため事業の大きさは基本的に株式会社よりも小さいことになります。

簡単にまとめると、お金儲けできる規模の大きなことをするには大量のお金が必要。そういう事業は儲けも高いがリスクも高い。億万長者か一文無しの二者択一じゃあ一文無しになるのが怖くてやってられない。だから儲けもリスクもみんなで分け合おう。それが株式の基本的な概念です。

ここで理論が二つに分かれます。投資家(株主)がお金を払っているのだから、会社は株主に対してできるだけお金を返せるように努力しなければならない。これがエージェンシー理論です(ちなみにAgencyとは日本語で仲介、代理という意味です)。パワーは株主が持っていて、会社は株主から預かったお金をどうやりくりして、できるだけ増やしてお金を返す(配当)かが最大の焦点になります。(実際は配当だけでなく、値段が上がったあとに株式を売却する事による売却益も入ります)小難しく言うと、企業は株主の利益を最大化するために存在している、というのがエージェンシー理論で、アメリカの多くの企業がこの理念でもって動いています。だからアメリカの講義では「利益を最大化するのが経営だ!」と繰り返し、繰り返し、キーワードとして用いられます。

その一方で、企業が事業を達成するために、株主から資金を募っているのだとするのがスチュワードシップ理論です(Stewardshipとは経営、管理という意味です)。「私たちが達成したいことが第一です。達成にはお金が必要なんです。それに共感してくれて、お金を投資してくれたなら、もちろんお金を増やして返します。」これがスチュワードシップ理論の主な考えです。日本企業ではこの発想が強いといわれています。

エージェンシー理論では、株主のお金を儲けようという動機が、会社を突き動かすことになります。お金が儲けられる企業には投資化が積極的に投資し、企業はどんどんと大きくなり、大きな事業をし、また利益を得、投資をさらに得るというような循環をします。収益をより大きくしていくにはこの理論は有効に働くと思われます。しかしながら、株主の利益と、企業の利益が相容れないときに問題が発生します。たとえば株主がお金を儲けるためだけに多額の投資をしていて、これから企業が収益の低いがより理念に沿った事業を進めたいとします。しかしこの理論下では株主の意向を最優先しなければならないため、もし株主に、「そんな意味のないことをしたら株を全部売るぞ!」といわれたら、事業をあきらめるか、その優先順位を下げねばなりません。(実際は株を売られても、会社の資産残高には影響しません。株価の値下がりによって資金調達が難しくなったり、株主総会で意思決定を否決されたりする可能性があります)もう一つは株主から投資を得ようと、経営者が収益や株価の拡大だけを目的とした非倫理的な行動に出ることがあります。アメリカの超有名企業として知られていたエンロンのケースがまさにそれで、企業が社会一般に公開する報告書に収益を水増しして記載し、それを信じた株主達が投資を加速させました。その結果、莫大な資金がエンロンに集まったものの、正当な配当を返せるだけの実態が伴わず、経済に深刻な経済的なダメージを与えて倒産しました。多くの人たちが大量の資産を失ったといわれています。

続く
(次回投稿)http://hiro-tanaka-19840522.blogspot.com/2010/12/2.html