2012年4月24日火曜日

バスケプロリーグJBL・トヨタの優勝と変化の予感


4月22日、トヨタが5年ぶりの優勝。長い間覇権を握ってきたアイシン王座を奪い、全員バスケでトヨタがアイシンに完全勝利する形で2011-2012年のJBLシーズンは幕を閉じた。





アイシンの負け方を見て、ひとつの時代が終わった気がした。個々人の能力の足し算で勝利が決まっていたバスケットから、チームで闘うバスケへ。バスケをプレーすること自体が職業としてなりたっていた環境から、応援されるチームが質実ともに持続的に成長し、頂点を極めるという風潮へ。

この変化は、他のスポーツ業界から比べれば、とても遅い変化なのは指摘される点かもしれない。野球、サッカーはとっくにその風潮になっている。けれども、これからバスケ界に確実に変化は起きる気がする。決して遅くは無い、野球ともサッカーとも違う成長を追い求めていける。

僕自身、スポーツ関連のNPOを経営していることもあり、平等性の観点からも僕自身がひとつのチームを過度に応援することはあまり望ましいことではないのは事実。それでなお今年のトヨタには応援する理由があった。何回かお話しする機会があった岡田優介選手、伊藤大司選手の存在が大かった。


岡田選手にはなぜ、日本代表の活動を続けながら公認会計士の資格を目指したのか聞いたことがある。そのとき彼はこんなふうに応えていた。「バスケットボールの日本代表というバスケット選手として一番難しいチャレンジ、そしてビジネスの資格の中で最も難しい資格のひとつとされる公認会計士、両方を同時に達成することでアスリートであっても文武両道を達成できることを証明したかった。実は絶対に公認会計士ではなくてはいけないということでは無かった。一番困難な挑戦の一つとして公認会計士試験があったから、それに打ち勝つということを達成したかった」
自身の得点能力を犠牲にしてまで相手の司令塔に対して執拗にディフェンスプレッシャーをかけ続け、アイシンのチームワークに大きなダメージを与えた。



伊藤選手は高校の頃からアメリカにチャレンジし、世界の大学リーグの中で格段に競争が熾烈なNCAA一部リーグで2年生の頃からキャプテンを務めた選手。彼にも、海外に挑戦した経験について聞いたことがある。「子供達には少しでも早く世界にチャレンジして、その興奮を体感して欲しい。海外挑戦の興奮を子供達に知って欲しい」
アメリカの大学出身らしく情熱をコート上で露出する伊藤選手。優勝が決まったときも歓喜の雄たけびを上げていた。



二人の話を聞いたとき、日本のバスケの何かが変わる気がした。彼らは「バスケが好き」その想いが何より一番で突き動かされているのは間違いない。けれども、彼らがその気持ちを追い求める先に待っているのはバスケ界の発展だけではない。彼らがバスケットを追及する先には、自分以外の誰かを勇気付け、挑戦のエネルギーを引き出す光がある。そして、その輝きはバスケットボールを好きではない人間さえも照らすだろう。

偶然か、必然か、若者のキャリア教育の問題が叫ばれるこの時代において、トップアスリートがビジネスにチャレンジする姿は子供たちに鮮明に突き刺さるだろう。偶然か、必然か、国際コミュニケーション能力の世界的劣後が叫ばれるこの時代において、単なるスポーツ留学ではなく、学業にも厳しいアメリカの4年生の大学でしっかりと勉強し、アメリカ人に対してリーダーシップを示した姿は海外コミュニケーションのあり方を提示するものとなるだろう。今の日本社会で重要かつ喫緊の課題に解決策の方向性を提示できることにおいて、この二人は突出したものを持っていると感じるのだ。バスケットというフィールドだから分かりづらいのが苦しい。けれどもこの凄さは、事実さえ伝播させればメッセージは必ず伝わる。



震災の被害が大きかった石巻市でのバスケクリニック。岡田選手や伊藤選手の想いを受取った子供たちの中から、世界を牽引する人間が登場するに違いない。



そんな彼らが震災から1年明けたこのタイミングで想いを果たして優勝した、それは大きな意味がある。バスケットボールだけではない、日本のスポーツにとって意味のあることのように思うのだ。この熱が冷めないうちに子供たちの未来の明るい連続へと繋がるよう、彼らの想いがもっと多くの人に届くよう、少しずつ僕自身も挑戦を積み重ねていきたい。

岡田選手、伊藤選手、二ノ宮選手、そして仙台89ersの選手とともに行ったクリニック
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ずっと応援してきたからこそ、この文章は主観的で偏りがあることは百も承知で。けれども、全く面識の無い時から、心の底から応援するようになったきっかけは嘘じゃなくて。そして応援している人の夢が叶った瞬間の気持ちを書き記しておきたくて、こうして文章を書いています。来年からは、もう少しニュートラルでいかないとですね(笑)。トヨタが王者から引き摺り下ろされる危機感を感じるようなライバルができるよう、色々なチームのサポートに力を入れて行きたいと考えています。

1 件のコメント:

  1. 素晴らしいブログに接し喜んでいます。昨年9月一般社団法人「籠究塾」を立ち上げ、日本のバスケットボールプレーヤーが世界にはばたいてくれるお手伝いをしたいと関西の大学先生・コーチたちと立ち上げました。できるだけ多くのセミナーやクリニックを開催し、世界に通じる優秀な選手を育てる指導者を養成したいと考えています。2月にはシアトルに3週間行きECBAのジェイソンコーチの指導を学んできました。この夏アメリカの子供たちを連れて日本に来られるので楽しみにしています。頑張りましょう。笈田

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