2012年9月30日日曜日

「あなたがスポーツを子供にさせたから、今日食べるご飯がないの」

今日は東工大の蒲田キャンパスで行われた社会起業関係のシンポジウムに参加してきました。
http://www.teu.ac.jp/sentre/

スポーツの価値って何なのだろう、スポーツができることって何なのだろう、そんなことを深く、深く考えさせられることがあったので、心に留めておくために、久しぶりにブログを書こうと思いました。
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このシンポジウムでどうしても聞きたかったのが、大学時代に一緒に障害者とのスポーツ交流会のプロジェクトをやっていた山田貴子ちゃん(以下から、やまちゃん)の経営しているWAKU WORK Englishの話。
http://wwenglish.jp/
フィリピン人の英語教師と日本人をSkypeで繋ぎ、ビジネスにするもの。ただ、安価な英語レッスンというだけではない。フィリピン人がしっかり稼げるビジネスモデルを構築し、フィリピンの若者の自立や夢を追うことを支援しようとしている。

スポーツ大好きっ子だったやまちゃん。大学4年生まではスポーツでフィリピンの子供達を笑顔にしたいと言ってフィリピンに何度も通っては、ストリートチルドレンとバスケットボールをしていた。満面の笑みの子供たちに囲まれて、楽しい時間をすごしていたけれど、4年生の終わりも近づいたころ、フィリピン人の子供の母親の一言が彼女の考え方を一気に変えたという。

「子供達は楽しいし笑ってるけど、あなたと一日遊んでいたせいで、子供がはたらくことができず、私たちは今日食べるご飯がないんだよ」

ボクはその場にもちろん居たわけではないし、やまちゃんから間接的に聞いた言葉にも関わらず、スポーツを愛する人間としてすごく悔しい思いがした。でもこれが現実であって、認めるべき事実なんだって思った。やまちゃんはそこから、本当にフィリピンの役に立つにはフィリピンの人が経済的に自立し、夢を追うために、ちゃんと稼げるビジネスモデルを現地でつくらなくちゃいけないと思ったという。

スポーツの果たせる価値って何なのだろう。スポーツに求められる役割ってなんなんだろう。もちろん、フィリピンと日本では状況が違う。でも、フィリピンの子供のお母さんが言っていたことは、すごく本質をついているのだと思うのだ。

「部活動ばっかりやってないで、勉強しなさい。いい大学に行きなさい」

そういう日本人の母親も、遠からずフィリピンの母親と同じことを言っている。その反論としてボクらは部活動は「チームワーク」「ヒトとヒトのやり取り」「礼儀作法」を知るこれとない場所とかと言ってスポーツの価値を正当化しようとする。

だけど、それってスポーツだけ特有の価値なんだろうか。WAKU WORKに勤めるフィリピン人の学生は、スポーツをしていなくたって、英語を一生懸命勉強し、組織の中で頑張り、仲間と励まし合い、稼げるようになって余った奨学金を孤児院に寄付し、立派に社会との関わり合いの中で生きている。しかもやまちゃんはこういう。

「私が一般企業さんに研修として使ってもらえないか営業に行く時は、一切フィリピンの事情は話しません。単純に英会話教室の他社さんと比較して、安価かつ高品質のサービスであることだけを強調して使ってもらうよう営業しています」

こういう姿勢こそがフィリピン人に自尊心をもたせ、自立に導くのだと思う。僕が親だったら、適当に部活動をやるくらいなら、きっとWAKU WORKでインターンしてきなさい、と思ってしまうだろう(部活を適当にやるような子はWAKU WORKでは必要とされないと思うけど)。



スポーツを通じて社会問題を解決する。スポーツにしかできないことがある。決してその想いは消えてはいないし、揺らいでもいない。けれど、今日話を聞いて衝撃を受けた現実は、目を背けずにいたいのだ。


「あの時スポーツに出会えたことが、自分の人生で本当に役にたっている」
「スポーツを選んだからこそ、本当にあの子は強く生きていく力を身につけた」


今を生きる子供達が、今を生きる子供達を想う母親達が、10年後、20年後、そう思ってくれるように。そして、


「スポーツの力があるからこそ、今の日本が強く、逞しくある」



20年後、30年後、そんな社会になっているように。そんなふうに僕自身が振り返れるように。コツ、コツ、コツ、コツ、近道はない。今できることを行動として積み重ねていこうと思う。

今度は社会人として同じフィールドで、もっともっと高いハイタッチができる日が来るように。


やまちゃん、ほんとカッコ良かったな。もっと自分もがんばろっと!


山田貴子ちゃんのインタビュー記事
http://webronza.asahi.com/synodos/2012021700001.html

やまちゃんと一緒にやってたバリアフリースポーツ
http://city-sports.sfc.keio.ac.jp/top.htm

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