2010年10月14日木曜日

スポーツ選手の現在価値(1)

世界に名を轟かすアスリート達。世界のスターになれれば年収数億円もザラではない。


これ以上もらってどうするのか、強欲だ、という人もいる。それは恐らく、その選手の生涯年収を単純合算し、サラリーマンの平均生涯所得と比べて多いだとか、少ないだとか言っているのだと思います。

ちなみに大卒男性の平均生涯所得は2億7,590万円だそうです。
http://nensyu-labo.com/heikin_syougai.htm

さらに日本のプロ野球選手の平均年俸は3,830万円
http://sankei.jp.msn.com/sports/baseball/100426/bbl1004261815002-n1.htm

単純計算するとサラリーマンが22歳から60歳まで38年も汗水流して得られる生涯年収をプロ野球選手は約7年で稼いでしまい、一生懸命働くのがアホ臭く感じるかもしれません。

しかし!!!ファイナンスの考えを用いると、もしかしたらその考えが覆るかもしれないのです。(恐らく)日本初!先にウェブサイトで参照した条件でスポーツ選手の現在価値を算出することにチャレンジしてみたいと思います。誰か他にやっている人がいたら教えて下さい。その人に会ってみたい!

試算をするに当たって、ある程度前提となる考えを説明する必要があるので、2回に分けてお届けします。

ファイナンスを理解する上で重要となるのが「時間価値概念」「リスク」です。これによって「割引率」を決めます。

まずは時間価値概念の説明です。10年後の1億円と、今手に入る1億円、どちらが得でしょうか。そう100人に聞いたら、100人「今」と即答するでしょう。しかし、それは何故でしょう。ファイナンス理論においてその答えは、リスクフリーの方法でお金を運用すると「必ず」増えるからです。日本のメガバンクが10年後に潰れることはまず考えられません。それであれば今すぐ1億円を手に入れて、毎年1%の利率の1年定期預金に預ければ(複利)、10年後には1.01の10乗、約1億1,046万円になる試算になります。逆に同条件で10年後に1億円にするには今、いくらあればよいかというと、1億を1.01で10回割ればいい。約9,052万円を毎年1%の利率の1年定期預金に預ければ、10年後に1億円になります。

つまり、10年後に手に入る1億円は現在の経済的価値(割引現在価値=Discounted Cash Flow/DCF)に置き換えると約9,052万円の価値しかなく、時間には金銭的な価値があることが合理的に証明できるのです。Time is moneyとはよく言ったものです。

次にリスクについて説明します。成功したら1億円稼げるが、潰れる可能性が50%の事業Aと100%潰れないB事業、あなたが経営者だったらどちらの事業を選びますか?事業Aを選んだ経営者は絶対に株主に訴えられます(笑)この例ではあまり試算する必要も無いと思いますので、ちょっと条件を変えてみましょう。

【条件】
事業A:初年度の投資額は100億円。年度末に100億円収入が入る。1年後事業が頓挫する可能性は50%。
事業B:初年度の投資額は100億円。年度末に80億円収入が入る。1年後事業が頓挫する可能性は20%。

【質問】
あなたが合理的な経営者だとして3年間事業を継続するとしたらどちらの事業を実行するべきか。

【解答】
事業B

【解答までのプロセス】
事業Aの正味現在価値:▲12.5億円=87.5億円(100×50%+100×50%2乗+100×50%3乗)−100億円
事業Bの正味現在価値:56.16億円=156.16億円(80×80%+80×80%2乗+80×80%3乗)−100億円

単純合算すると事業Aは300億円。事業Bは240億円。初期投資額をマイナスしても事業Aは2倍ものの利益率です。一回くらいなら、偶然うまく行くかもしれません。しかしファイナンスの考えに基づいて100回事業Aをやったら、これもまた確実に貴方は株主に損害賠償請求を受けます。

先に説明した割引現在価値(DFC)から投資総額を差し引いたものを正味現在価値(Net Present Value/NPV)といいます。

時間価値概念、リスクを勘案して出した数字を割引率といい、割引率を用いてDFCを出します。これらの考え方は総合商社や投資銀行で事業採算を求める時には当たり前に用いられている手法で、投資実行判断をする上で最も基本となる考え方です。事業Aを選ぶくらいなら国債でも買っておけ、これがファイナンス理論に基づく答えです。

勘が鋭い人は、僕がこの後どんな計算をしようとしているかきっと気がつくはずです。

興味を持った人は以下の本、MBAファイナンスを読んでみることを強くお勧めします。僕は初めて読んだとき、目から鱗が落ちる思いでした。


それでは次回、スポーツ選手の現在価値を算出してみましょう。